GIGAスクール構想の実現について、初心者向けに簡潔に解説!
「GIGAスクール構想」という単語が昨年より取り上げられていますが、一体どのような構想なのでしょうか。この構想は、令和スタンダード教育として文部科学省が発表したものですが、その内容について詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、教育現場で仕事をして6年目のwebライター「茶もふ」が、GIGAスクール構想について初心者向けに解説いたします。
文部科学省が掲げるGIGAスクール構想とは
GIGAスクール構想とは
GIGAスクール構想とは、2019年12月に文部科学省が打ち出したものです。GIGAとは「Global and Innovation Gateway for All」の頭文字を取ったものであり、「国際的で革新的な入り口を全て人に」という意味です。全国の学校現場において、全ての児童生徒が1人も取り残されることがないような教育を行うことが1番の目的です。
構想における土台は、「全ての児童生徒に1人1台の学習用端末を配備すること」と「高速で大容量の通信ネットワーク環境を整備すること」です。これにより、個別最適化された教育を全国の学校現場で実現させるものです。
2020年4月に新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が発令されました。これを受けて、萩生田光一文部科学大臣は記者会見を開き、GIGAスクール構想を早期実現するための支援などを積極的に推進すると表明しました。
なぜGIGAスクール構想の実現が必要なのか
学校におけるICT環境は脆弱である上、都道府県による地域間による整備状況の格差は深刻であります。また、日本の学校の授業におけるデジタル機器の使用率は世界的と比較して低く、OECD加盟国の中で最下位となっています。
このような従来の学習環境から脱却し、ICT技術を最大限活用したグローバルな学習環境を整備する必要があります。文部科学省はGIGAスクール構想について、以下のとおり掲げています。
①特別な支援を必要とする児童生徒を含めた全ての児童生徒を1人も取り残さず、公正に個別最適化されたICT学習環境により、能力を確実に育成する。
②これまでの教育実践と最先端ICT技術のベストミックスにより、教師及び児童生徒の力を最大限に引き出す。
整備スケジュールが前倒しに
文部科学省がGIGAスクール構想を発表した当初は、5か年計画(令和元年〜令和5年)で段階的に整備するスケジュールとなっていました。小中学校におけるプログラミング教育の必修化に伴い、まずは小学5・6年生と中学1年生から順番に配備し、令和5年度までに小学1年生〜中学3年生までの全ての児童生徒に配備する予定でした。
しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年5月に文部科学省から前倒しの情報が発表されました。小学5・6年生と中学1年生だけではなく、ほかの学年の分も令和元度(2020年度)の補正予算に計上されました。
GIGAスクール構想の目的と課題
最適な学習環境の提供
「1人1台端末配備」と「高速大容量ネットワーク整備」を一体的に整備することで、多様な子どもたち1人1人に個別最適化されたICT教育を実現します。文部科学省は、以下の3つ効果を公開しています。
【一斉学習】
授業中に児童生徒1人1人の反応を踏まえ、双方向型の授業展開が可能になります。これは、従来の黒板を使った一方的な授業スタイルでは難しかったことです。
【個別学習】
全ての児童生徒に対して、それぞれに最適な個別学習を行うことが可能になります。これにより、児童生徒1人1人の能力や習熟度に応じた学習を行うことができます。
【協働学習】
ICTを活用することにより、協働学習が促進されます。配備された学習用端末を使用して、複数の児童生徒が意見交換をし、情報共有をすることが可能になります。遠隔地の学校とも繋がることができるようになり、学校を超えた学習も期待されます。
校務の効率化よる教職員の働き方改革の推進
GIGAスクール構想においては、児童生徒の学習環境の整備のみならず、校務のクラウド化も推奨しています。クラウド化することで、教職員が誰でもデータにアクセスすることができるようになり、教員の業務効率化が図れます。
また、統合型校務支援システムの導入により、出欠確認、宿題や提出物のチェック、テストの作成・採点、評定及び通知表作成、生活指導など多くの業務をデジタル上でできるようになります。条件によっては、教員1人あたりの時間外業務を年間で100時間以上削減できるという試算も出ているようです。児童生徒のためのGIGAスクール構想ではなく、教員を含めた学校全体にとって有益な構想なのです。
子どもたちがICT環境を身近に体験するため
子どもたちが早期よりICT環境に触れられるようにすることも重要なポイントです。2020年度からは小・中学校におけるプログラミング教育が必修となりました。将来的にはIT人材の確保が今よりも多くなると見込まれますが、ICT環境やIT技術に接する機会がないまま社会に出る子どもが多いのが現状です。
課題
GIGAスクール構想において、大きな課題と言えるのが教員や親のIT知識やICT技術が不足していることです。端末やネットワークの整備などについては、コスト問題のみを考えれば済む話ですが、そもそも教員や親がICTを扱えないようでは子どもたちに教えることができません。実際、スマートフォンすら使えない年配の教員が私の周りにいます。そのような教員がいきなりICTを駆使して授業を行うことは容易ではありません。また、学校におけるネットワーク環境が整備できても、各家庭における通信環境が整っていなければ、十分に活用することができません。
WordやExcelなどを使用するというよう一般的なレベルのパソコン知識や技術を持っている人は多いと思います。ただ、、もう一歩踏み込んだネットワーク管理やセキュリティ知識となると、分からないという人が多いのではないでしょうか。また、スマートフォンやタブレットの普及により、パソコンを使わなくても問題なく生活できることもあり、特に若い世代でパソコン離れが進んでいることが話題となることも多いです。
GIGAスクール構想実現に向けて必要な環境整備
GIGAスクール構想におけるの4つのポイント
①「校内LANの整備」
・普通教室はもちろん、特別教室や体育館からでも校内LANにアクセスできる環境
・Wifiの同時接続に対応できるネットワーク環境
②「学習者用PC」
・各学校の教育プログラムに合わせた端末の導入
・文部科学省が示した標準仕様に合わせた端末の導入
③「学習と校務のクラウド化」
・学習ツールと校務(統合型校務支援システム)のクラウド化
④「ICTの活用」
・プログラミングの必修化
GIGAスクール構想の実現のための5つのパッケージ
GIGAスクール構想は文部科学省が掲げたものですが、実際に整備を進めていくのは各自治体となります。それぞれの区や市の教育委員会が担当することになります。そうすると、自治体によって対応のスピードや内容に差が生まれてしまうリスクがあります。そこで文部科学省では、GIGAスクール構想の実現パッケージとして、下の5つを示しています。
①環境整備の標準仕様書を例示し、都道府県レベルでの共同調達を行う。
②クラウド活用によるセキュリティポリシーを改定する。
③ICTを活用した学習活動の手引を公表し、全教員が迅速に対応できるようにする。
④総務省におけるローカル5Gを活用するなど、他省庁と連携する。
⑤ICT支援員などの人材など、民間の力を借りる。
GIGAスクール構想実現のための予算
令和元年度(2019年度)補正予算及び令和2年度(2020年度)予算において、計4,610億円の予算が計上されています。このうち、端末購入にかかる予算については、95%以上の自治体で執行済となっています。
GIGAスクール構想についてのまとめ
いかがでしたか。一応は平成生まれの私ですが、当時の学習環境と比べると、令和時代のスタンダード教育環境がハイレベルであると実感しております。このような構想をしっかりと生かすためには、施設整備や教員への研修がスムーズ追いつかなければなりません。各自治体は繁忙になると思いますが、ご尽力いただきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症が落ち着いた後も、自宅学習や協働学習などが積極的に行われ、令和時代を生き抜くハイレベルな子どもたちが育っていくことを願っています。